CHALLENGERS' VOICE
モビリティ・ロボティクス・宇宙で、「本気の未来」を実装する。
さいとうデザイン事務所株式会社 代表取締役
齋藤 祐介 Yusuke Saito

1983年生まれ。本田技研工業(株)のレース開発部門(HRC)で実機検証に携わった経験を起点に、大手自動車メーカーやベンチャー企業で設計のスペシャリストとして活躍。2024年に「さいとうデザイン事務所株式会社」を設立。

https://www.design-office-saito.com/

エンジニアが本気で向き合えるテーマに挑み続ける

「アイデアや要素技術はあるものの、意思決定や設計の段階で止まり、実装までたどり着かない」 そうした課題を解決し、エンジニアが本気で価値創出に向き合い、意思ある判断ができる環境をつくりたい——齋藤氏はそう語る。 齋藤氏が率いる「さいとうデザイン事務所株式会社」は、単なる設計受託会社ではない。モビリティやロボティクス、宇宙分野といった先端領域において、構想段階から実装までを伴走し、技術的な意思決定にも踏み込む「エンジニアリング・パートナー」である。 大手企業でエンジニアとして経験を積む中で、齋藤氏は組織の壁や、意思決定プロセスの複雑さによって、本来あるべきモノづくりの価値発揮が難しくなる場面を数多く経験してきた。そこで価値創出を軸に事業を成長させることを重視し、プロフェッショナルがその能力を最大限に発揮できる環境をつくるべく、独立を決意した。 同社が大切にしているのは、常に「誠実であること」だ。単に依頼された仕様に沿って設計を行うのではなく、その妥当性も含めて検討し、プロジェクトの本質的なゴールを見極める。そのうえで、単に作ることを目的とせず、価値実現にとって最適な意思決定を支援することに重きを置いている。

「外注」ではなく「伴走者」。独自のCTOエンジニアリング・スタンス

さいとうデザインの最大の特徴は、自らを「伴走するCTO」と位置づけ、単なる開発支援にとどまらず、技術的な意思決定に踏み込むエンジニアリング・サービスにある。 同社は、製品の企画構想から基本設計、詳細設計、そして協力会社ネットワークを駆使した試作・実験までを一貫して引き受けている。 特にスタートアップやベンチャー企業にとってハードウェア開発は高いハードルとなり、「何を、どう作るべきか」という上流工程で判断が迷う場面も少なくない中、技術的な意思決定から実装までを担うそのスタイルは、まさに「社外の技術責任者(CTO)」そのものだと言える。 具体的な実績は多岐にわたり、大手企業の新規事業における宇宙機開発や、CES(世界最大級の家電見本市)に出展される最先端の試作車開発、さらには国立大学の研究室とのロボット共同開発など、難易度の高いプロジェクトが並んでいる。小規模組織ならではの機動力と、大手企業水準の品質を両立させることで、構想を確実に実装へとつなげている。

現場から設計へ。挫折を糧に見出したモノづくりの真髄

齋藤氏のモノづくりの原点は、学生時代に熱中したモータースポーツや、日常的に取り組んできたバイクいじりにあるという。 「元々はプライベートでのレース活動や、レーサー開発に携わることを志していました。その後ホンダのレース開発部門であるHRC(株式会社ホンダ・レーシング)に所属し、テストライダーとして実機検証に携わりながら、現場で仕様の確からしさや妥当性を見極めることに心血を注いでいました」 しかし、リーマンショックによる体制変更という大きな転機が訪れ、現場から設計部門への異動を命じられた当初、齋藤氏は強い葛藤を抱いたという。 それでも設計の仕事に向き合う中で 「図面は単なる絵ではなく、モノを動かし、目的を達成するための意志である」という モノづくりの奥深さに気づかされることになる。 その後、自動運転開発(ADAS開発)などを通じてシステム設計の経験を積み、さらにロボットベンチャーや人工衛星開発といった変化の激しい環境で多様な開発経験を積み、ソフト・ハード・システムの境界を越えたエンジニアとしての土台を築いた。 これら現場での実機検証と設計の双方の経験が、現在の「現場感覚を持った設計者」という唯一無二の強みにつながっているのだ。

次世代エンジニアの育成と、強固なパートナーシップの拡大

「価値の伴わないモノづくりではなく、品質はもちろん、その製品が持つ『価値』まで責任を持ちたい」と齋藤氏は断言する。 今後の展望として掲げるのは、個人の経験やスキルに強みを持ちながらも、「組織としての再現性」の確立だ。現在、齋藤氏は自らの知見や判断基準を言語化・体系化し、若手エンジニアへと継承することで、個の力を組織の力へと昇華させていく。 また、地域の製造パートナーや専門企業との連携をさらに強化し、小規模ながらも大きなインパクトを生み出せる「エンジニアリング・ハブ」としての進化を目指している。 その象徴的な存在が、前々職時代から関係を築いてきた株式会社アースブルーム(HAYAMA KOGYOをグループとして展開)の千葉社長と松村部長だ。齋藤氏が「彼らがいなければ成立しない」と語るほどの信頼関係のもと、両者は単なる外注を超えたパートナーとして連携している。 例えば、現場での組み立て中に急なトラブルが発生しても、即座に部品を製作し、翌朝には作業を再開できる。この圧倒的な即応力が、同社の実装力を支えている。 こうした人材とパートナーの両輪によって、さいとうデザインは構想から実装までを一貫して支える「エンジニアリング・ハブ」として事業を育て、齋藤氏は日本の製造業に新しい風を吹き込もうとしている。