CHALLENGERS' VOICE
必要なのは覚悟だけ
株式会社Vision 代表取締役
平山 智裕 Hirayama Tomohiro

高知大学理学部化学科を卒業後、岡山のIT企業に就職。東京転勤を経て、大手IT企業で上流工程やプロジェクトマネジメントに従事。2018年に株式会社Visionを創業。中小企業のIT基盤構築を支援し、自走力を引き出す独自のアプローチを展開。現在は経営者として組織成長とDX推進に尽力している。

https://vision-sys.co.jp/

淵野辺からつくりだす本質的価値

相模原市、淵野辺という土地には、静かでありながら確かな熱を孕んだ空気が流れている。巨大都市・東京の喧騒から一歩外れたその地は、意志ある者が自らの力で価値を生み出し、独自の道を切り開く場でもある。成功という言葉は、ことビジネスの世界で安易に使われがちだ。しかし、本当に持続的な価値を生み出す企業は、単純な拡大路線に頼らない。 株式会社Vision、その代表を務める平山智裕は、表面的な成長ではなく、組織の内側から生まれる強さに注目し、ITを基盤に中小企業が自走できる環境づくりに挑む希有な存在である。技術者としての矜持と、経営者としての覚悟。彼が築き上げたこの企業は、単なるIT企業ではない。それは中小企業の「自走力」を引き出すための創造的基盤であり、技術と経営を結びつける知的エンジンなのだ。 まさに淵野辺を牽引する存在として輝く平山。彼がたどってきた道のりと、その目が見据えている神奈川の未来を探る。

インタビューの様子

中小企業が直面する「持続的成長の壁」

業務中の社員

平山がこの地に足をつけたのは偶然ではない。幼少期から新しい事象に対する好奇心が強く、大学卒業後は企業の内情を理解しながら問題解決を行う仕事を志向するようになった平山。岡山のIT企業に就職し、東京への転勤を命じられた彼は、そこで日本のIT業界の構造的な問題を目の当たりにする。大手企業に属していた彼は、次第に組織の硬直性に違和感を覚え始めた。意思決定の遅さ、不要な承認プロセス、顧客が本当に求めているものが届かない仕組み…平山は思った。「もっとシンプルに、もっと本質的に。ITは経営の支援者であり、組織の成長を促すもののはずだ」と。 彼はその違和感を突破するため、2018年5月10日、自らの会社を創業する決意を固めた。中小企業には優れた製品やサービス、独自性のあるビジネスモデルがある一方、ITに関する知見や十分な人材リソースが乏しく、必要な情報システムを構築・改善するハードルが高い。市場が急激に変化する中、どのようなIT基盤を整え、いかに自社の強みを生かして持続的な成長を図るべきか。彼の目指すのは「クライアントの自走力を引き出す」ためのシステム構築であり、ITを単なる受託開発ではなく、企業の本質的な課題解決のツールとすることだった。 Visionの特異性は、その事業の進め方にある。多くのIT企業がテンプレート化されたソリューションを提供する中、Visionは一つひとつの企業のビジネスモデルや課題を分析し、それぞれに最適化されたシステムを設計・開発する。そのプロセスには「経営そのものをデザインする」視点が組み込まれている。このように、Visionのアプローチは「作ること」では終わらない。「成長のための基盤を築くこと」にある。開発されたシステムが単なるツールとしてではなく、企業の内部から変革を促すためのものとなるよう、導入後の運用支援にも徹底して力を入れる。

つくっただけでは終われない

現在、Visionが展開する事業はITコンサルティング、システム開発、そして導入後のアフターサポートまで一貫したサービス提供に特徴がある。その根底にあるのは「クライアント企業が、ITを自ら運用し、改善を重ねることで、進化し続けられる仕組みを築く」というビジョンだ。 単純なヒアリングや要件定義にとどまらず、企業のビジネスモデルや戦略、組織体制、業務プロセスを深く認識し、クライアントの現状分析を重視したITコンサルティング。基幹業務システム、顧客管理ツール、在庫・物流管理システム、そしてデータ分析基盤など社内に経験豊富なエンジニアを有し、クライアント固有の要件に合わせてオーダーメイドなソリューションを生み出し続けるシステム開発フェーズ。Visionが強みとする、導入後のアフターサポートや運用支援。 こうした一連のプロセスを通じて、Visionはクライアント企業が「ITを使いこなし、事業戦略に生かせる組織」へと成長・進化するための伴走者として、神奈川をはじめとして全国各地で活躍の場を広げている。受託開発という言葉から想像される一過性のプロジェクトとは異なり、企業内部の成長を促す「長期的なパートナーシップ」を築く点こそが、同社の注目すべきアプローチだと平山は語る。 「ITはツールに過ぎない。問題は、それをどう使うかです。」平山は単なる経営者ではない。彼は、企業が持続的に成長するためには「覚悟」が必要だと考えている。それは彼自身の言葉にも現れている。組織としての方向性も明確だ。ただ規模を拡大するのではなく、一人ひとりの社員を深く理解し、経営層との距離が近い組織を保つ。Visionの理想のチームは、ただの上下関係ではなく、議論が双方向に飛び交う環境だ。

業務中の社員

海を越えて活躍できる組織を目指して

ビジネス環境がめまぐるしく変化する中、Visionはさらなる価値創造へと歩みを進める意志を明確にしている。これまでの実績と蓄積したノウハウは、業種や企業規模に囚われず、幅広いクライアントへ展開可能であることを示してきた。今後は、IT導入支援だけでなく、より戦略的な情報活用、そしてクライアントが自社内で高度な判断を下せるIT基盤作りを強化することで「中小企業が自立的に成長可能なエコシステム」を拡張していく考えだ。 将来的には、国内市場にとどまらず、ミャンマーをはじめとした海外市場への展開も視野に入れている。文化的背景や市場特性が異なる海外では、より柔軟で適応力の高いIT基盤が求められる。Visionがこれまで培ってきた「組織内に根付く自走力の醸成」が、海外ビジネス展開を図る日本企業や、逆に日本進出を目指す海外企業にとって、大きな価値となる可能性を秘めている。 Visionの未来は、ただの技術革新にとどまらない。AIやDXの進化が進む中で、企業が本当に求めるのは「技術そのもの」ではなく、「それをどう活かすか」だ。Visionは、プロジェクトマネジメントの重要性を説き、単なるプログラム開発ではなく、クライアントのビジョンそのものを支援する役割へと進化しようとしている。 品質管理の父とも呼ばれるエドワード・デミングは「品質とは継続的な改善のプロセスであり、それを可能にする組織文化こそが重要である」と説いた。Visionのアプローチはまさにそれであり、システムを作ること自体が目的ではなく、「改善のサイクルを組織に根付かせること」にある。 「作ったら終わりではありません。そこからが始まりです。」この理念こそが、Visionの本質であり、平山智裕という男が描く未来への指針なのだ。彼の視線の先には、ただの企業成長ではなく、日本の中小企業が自らの力で未来を切り開いていく姿が映っている。 必要なのは、技術でも資本でもない。「覚悟」なのだ。

談笑する平山社長