CHALLENGERS' VOICE
自分の可能性を信じ切ること
株式会社マザーグース 代表取締役
柴崎 方恵 Shibasaki Masae

大学卒業後、ソニーで海外営業サポートに従事。結婚を機に退社し、1994年に神奈川県茅ヶ崎でベビーシッター業を起業。口コミで評判を呼び、保育園運営や企業内保育、フランチャイズ展開を全国に広げている。

https://mothergoose.jp/

育児業界を情熱で切り開く女

子どもが生まれて初めてわかる世界がある。育児というのは、どこまで行っても「初心者」の連続だ。泣き止まない夜に抱きしめながら思うこと。自分ひとりではできないことの多さに途方に暮れる。 そんなとき助けてくれるのがベビーシッターだ。単に子どもを預かるだけでなく、食事やお風呂の世話、遊び相手や宿題のサポートなど、多岐にわたる役割を担う。最近では、語学や芸術的な教育を取り入れたサービスも登場し、子育てのパートナーとしての期待も高まっている。 一方で、ベビーシッターを頼む側の意識にも変化が見られる。かつては「他人に子を任せる」ことに抵抗感を抱く人も多かったが、共働き家庭や核家族の増加を背景に、その抵抗感も薄れてきた。シッターを利用することはもはや贅沢ではなく、生活の一部となりつつある。 1994年、神奈川県茅ヶ崎の片隅でひっそりと芽吹いた一筋の情熱が、今日では子育て支援という大海原を切り拓く礎となっている。株式会社マザーグースは、はじめは柴崎自身が自分の子どもを預けるベビーシッターが近所になかったがゆえに、ベビーシッター請負業として誕生した会社だったが、その後、保育園運営、企業内保育、院内保育、さらには人材サービスや新規事業へと多角化し、今や全国に21施設を展開するまでに成長した。創業者であり代表取締役会長である柴崎方恵氏は、幼い頃から家族や仲間たちとの温かな絆を背景に、自らの直感と実践力で「働く親が安心して子どもを育てられる環境」を実現するため、ひたむきに挑戦を続けてきた人物だ。

保育ルーム

自分がやらねば誰がやる

インタビューの様子

大学を卒業し、かつてはソニーという大企業の一員として働いていた彼女は、結婚を機に退社。自らの子育てで信頼できる保育サービスが見当たらないという現実に直面し、思い切って「自分がいなければ誰が?」という強い使命感に駆られたという。 最初は、限られた資金と狭い空間の中で、ひたすら試行錯誤を重ねながらベビーシッター業をスタート。その熱意は口コミとなり、やがて大手ホテルへの営業訪問や、地域の病院からの委託依頼へと広がっていった。彼女が「必要だから、やる」と決断した瞬間から、マザーグースは一人ひとりの子どもとその家族に寄り添う温かな光として、地域社会に根ざして成長していったのである。 創業当初、わずか数室の小さな保育施設で始まったマザーグース。今や保育業界のパイオニアとして、企業内保育やフランチャイズ展開といった形で全国に波及している。柴崎は「子どもたちの未来は、ひとりひとりの輝く笑顔に繋がっている」と紡ぐ。その言葉通り、保育現場においてはスタッフ一人ひとりが愛情と情熱を持って、子どもたちの可能性を引き出すために今も奮闘しているのだ。

子ども向け「起業家スクール」

今日のベビーシッター業界には、社会問題として顕在化されている課題も少なくない。例えば、シッター自身の労働環境や待遇が十分に整備されていないケース。勤務時間の不安定さや賃金の低さ、さらには保険やトラブル時の補償など、改善が求められる課題は多い。 そして現代社会が抱える働く親の悩み…つまり「仕事と子育ての両立」という難題に対して、柴崎は柔軟かつ大胆な発想で取り組む。企業内保育の導入や、24時間体制のベビーシッターサービスなど、時代のニーズに合わせたサービス提供に加え、今後は老人ホームと保育園を融合させた新たなリゾート型施設の構想にも取り組んでいる。 そのビジョンは単に「高齢者と子どもが共に過ごす」だけでなく、世代を超えた交流と学びの場として、地域全体の活性化に寄与するものだ。 さらに、子ども向け起業家スクールの構想を通じ、幼少期から金融リテラシーや起業マインドを育む教育に情熱を注いでおり、これまでの経験と成功体験をもとに、次世代に「失敗を恐れず挑戦し続ける」勇気を伝えようとしている。

書籍一覧

茅ヶ崎から広げる愛情

ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは中世の修道女であり、多彩な才能を持っていた。彼女は次のように語ったとされる。「Laus Trinitati, quae sonus et vita ac creatrix omnium in vita ipsorum est.」讃美と生命、そして創造の根源を音と生命そのものに求めたのだ。これは、すべての存在がそれぞれの生きる場で、自らを創り出し、輝きを放っているという意味であり、つまるところまさに柴崎会長が日々実践していると言っても過言ではない。 彼女は、ただ利益を追求するのではなく、子どもたちとその家族、そして地域社会全体に「生きる力」と「愛情」を提供することで、真の社会貢献を実現しようとしているのだ。 柴崎は保育事業を通じて「母なる愛情」と「温かな支え」を提供することが、社会全体を明るく照らす源であると信じて疑わない。そしてその信念は、日々新たなチャレンジを恐れずに挑む姿勢として如実に現れている。その姿を見ると、ヒルデガルトが示した「生命そのものがすべてを生み出す」という教えが、柴崎自身にとっても大きな示唆となっていると、そう思わざるを得ないのだ。 今、株式会社マザーグースは、単なる保育サービス事業に留まらず、未来への投資として、働く親が安心して夢を追い、子どもたちが自由に羽ばたくことのできる社会の実現に向けた取り組みを続けている。 柴崎自身も、これから先、ますます多様な分野にその情熱を注ぎ、子どもたちと共に成長し続ける社会を目指す決意を新たにしている。彼女の瞳には、常に「可能性」という言葉が映し出されている。どんなに小さな一歩でも、その一歩が未来を大きく変えると信じてやまない

柴崎代表