ここにも、AMANO。
朝のオフィスビル。エントランスに差し込む柔らかな光の中、小さな端末に社員証をかざすと「ピッ」という控えめな音が響き、一人ひとりの一日が始まっていく。当たり前のように通り過ぎるその瞬間も、確実に時間が記録されている。 昼下がりのショッピングモール。駐車場の出口で、一台の車が停まる。ハンドルを握る若い母親は、運転席の窓から駐車券を精算機に差し込む。料金が表示され、支払いを終えるとバーが持ち上がる。日常の買い物を支えるこの仕組みが、穏やかな午後をつくっている。 夕方の郊外の工場。作業音が響く一角で、銀色の筐体が低い唸りをあげている。舞い上がった粉塵を次々と吸い込み、作業環境の空気を静かに整える。 夜遅く、人気のないオフィスビルのロビー。一台のロボットが床を動き回り、フロアを清掃している。昼間に残った足跡も丁寧に消し、翌日の準備を整えていく。その様子を遠くから見守る警備員も、少しだけ心が和らぐ。 日常の至るところで繰り返される光景。その中で、アマノ株式会社の技術が息づいている。勤怠管理システム、駐車場の精算機、作業環境を快適にする装置、清掃ロボットまで、人々の生活を地道に支えているのだ。

つねに時代のニーズを捉える

創業者・天野修一が国産初のタイムレコーダーを開発したとき、労働現場は確かに便利になった。それまで外国製の製品を輸入していたが、使いにくさを解決するために、自ら開発を始めたのがアマノ株式会社のスタートだった。勤怠管理の代名詞となったタイムレコーダーは、その後、駐車場の精算機にも応用され、身近な風景の一部となった。 「時間」を軸に技術を追求する中、アマノは次に「空気」という要素にも着目した。工場作業員が埃や煙に困っていることを知り、最初は輸入品を扱い、後にクリーナーや集塵機などの事業へ発展していった。まったく違う分野に見えるが、そこには「人々の困りごとを解決する」というシンプルな精神が貫かれている。このモノづくりの精神は90年以上、変わることなく受け継がれてきた。 アマノは勤怠管理システムを通じて、労働環境の透明性を高める手助けをしてきた。現在ではデジタル化が進み、スマートフォンやクラウドを活用した運用も可能になっている。単なる機械を提供する会社ではなく、企業や社会の課題に応じた製品やサービスを提供してきた。
粘り強く
「実際に目に見える製品があることに魅力を感じます」と語るのは、広報課長の竹本彩だ。彼女は保険会社勤務を経て、ものづくりへの関心からアマノへ転職。パーキング事業部や経営企画室を経て、現在は広報課長として社内外をつなぐ役割を果たしている。 広報課の使命は社内のコミュニケーションを活性化すること、と彼女は話す。社内報を電子化し、動画などを活用して社員の声や活動を紹介。またサステナビリティ委員会の事務局として環境保護活動を推進するなど、社会全体への貢献活動にも積極的だ。「業績に直結するわけではありませんが、こうした地道な取り組みが社員のモチベーションを高めることに繋がると思っています。」と竹本は語る。 会社の雰囲気は伝統的な製造業らしい堅実さを持ちながら、社員は現場に足を運び、直接顧客の声を製品に反映させる柔軟性を持つ。「やると決めれば突き詰める」という粘り強さが、安定的な成長を支えてきた。

一歩ずつ、しっかりと。
アマノは今後も「時間」と「空気」をテーマに、新しいテクノロジーや社会のニーズに応じて製品を進化させていく。竹本は「課題は多いですが、一歩ずつ前進していきたい」と前向きだ。 「誰かの困りごとを形にして解決するのは、ものづくりに限らずどの仕事にも通じます。相手が本当に必要としているものを見極めることが大切」と語る竹本の言葉に、アマノの基本姿勢が表れている。地道な取り組みを積み重ねながら、アマノは社会の課題解決に向けて一歩ずつ進んでいく。
